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【ゲーム】ゲーム業界を変えた名作「ドラゴンクエストⅠ」について【RPGの教科書】

先日話題になっていたドラゴンクエストⅠ(以降ドラクエⅠ)よりも自作RPGの方が、というTwitterがあったので思わず書き進めてしまいました。

今でも名作が続く「ドラゴンクエスト」シリーズ。ドラクエⅠがなければ今のゲーム業界が全く違う物になっていた可能性もあり、私がゲーム好きになった原因の1つです。

※今回の記事はとても長いのでご注意ください。

 

RPGの歴史

ドラクエを語るにはまずRPGの歴史を知る必要があります。
※調べた情報になりますので認識が間違っている可能性がある事をご了承ください。

RPGの歴史を辿ると有名な所でアメリカで1974年に発売したD&D(ダンジョン&ドラゴンズ)があります。D&DはTRPG(和名:テーブルトークRPG)でルールブックがあれば遊べる物でした。

D&d Box1st.jpg

Dungeons & Dragons (1974) - Wikipedia

D&Dは今でも続いていて追加のルールブックが発売されていてTRPGとして様々な物が発売されました。

このTRPGに触発され、コンピュータゲームを作っている人が目をつけました。

コンピュータRPG - Wikipedia

Wiki情報を全て正しいとは言えないですが、少なくとも全てデマというわけではないと思うのでいくつも試行錯誤したRPGのような物が発売されたのでしょう。

アメリカでは1970年後半から様々なRPGが作られ、その中でウルティマやウィザードリー等のRPGが生まれていきます。

ウルティマ - Wikipedia

ウィザードリィ - Wikipedia

どちらも1981年に発売されているので競争が激しかった事がよくわかります。

この時、日本にも来ていましたが、パソコンで遊ぶしかなく当時コンピュータはとても高価で一般的に普及しませんでした。更にRPGはクリエイターから出された難しい謎を解くゲームという立ち位置で知名度を広げていたのです。

RPGはドラクエⅠが日本では最初と思う人はいるかしれませんが、それよりも前1984年に「ザ・ブラックオニキス」という国産RPGがPCで発売されています。

名作ソフト一網打尽「ザ・ブラックオニキス」シリーズ ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~ - AKIBA PC Hotline!

それでもRPGは一般に普及せず今でいうマニアが遊ぶゲームの1つでしかありませんでした。理由は難しすぎてお勧めするには人を選ぶゲームになっていたからだと私は考えました。

実際3Dダンジョンは初心者には今でも難易度が高く、よほど好きな人でなければ「よくわからない」で終わってしまうような状態です、折角お勧めしたのに「わからなかったからやってない」と言われたらお勧めはできないですよね。

その少し前に任天堂からファミリーコンピュータ(以降ファミコン)が1983年に発売されているので同時期(1984年)のファミコン作品としては「ロードランナー」や「ゼビウス」が当てはまるでしょう。

その後、ファミコンを社会現象にまでした作品「スーパーマリオブラザーズ」が1985年に発売されます。日本で一躍有名になったファミコンがコンシューマゲーム機の知名度を広げはじめます。

もしかするとスーパーマリオブラザーズがなければファミコンがそこまで売れず、ドラクエⅠはファミコンでは発売さなかったり、ファミコンユーザーが少なく人におすすめされることなく鳴かず飛ばずで続いていなかったもしれません。

この時のエニックスはドアドアやポートピア連続殺人事件等を開発して発売していました。

エニックス(ENIX)_ファミコン(FC)ソフト全リスト(7本) | 総合ゲーム攻略・分析サイト

エニックスは他のRPGが高難易度のゲームになっていく中、ドラクエⅠはファミコンで出す為、ターゲットである子供に向けて徹底的に難易度を下げて遊びやすさとわかりやすさを突き詰める事になるのです。それがその後のRPGブームに繋がりました。

 

ドラクエⅠは新しい伝説の始まりだった

長々とRPGの歴史について書きましたが、何故他のRPGが話題にならずドラクエがこれだけ有名になったのかを知ってもらう為にも重要でした。

※YouTubeに上がっていたドラクエⅠについて余計な事のない良さそうな動画とともに話をしていきます。(8時間あるので全部見なくても大丈夫です)

www.youtube.com

 

ドラクエⅠにある2つの凄さ

ドラクエⅠの凄い所は大きく分けると「説明なく理解できる」「限られた容量を取捨選択」があります。

話の展開は「勇者が悪の竜王を打倒する」という完全懲悪、王道ストーリーです。

単純明快でわかりやすい!

 

説明なく理解できる

メッセージウィンドウが表示されてから王様の会話から始まり、プレイヤーは勇者の血を引く子孫で魔王を倒してくれ、とお願いされます。代わりに贈り物として「たからのはこをとるがよい」と言われます。これがチュートリアルです。

展開として王様が無理を言ってるのはわかっているから贈り物をするのは納得できるし、勝手に取るではなく納得して取っていいよと言われるのは全然違います。

そしてメッセージウィンドウが消えて動けるようになります。これは他のゲームのように会話だけで遊ぶゲームじゃないよ、自由に動けるよという事を暗に示しています。

直接付与する事もできるのですがそれはしていません。それにはこの画面がRPGの知らない人にとって全てが重要になるからです。

パッと見は普通の部屋?と思う人がいるかもしれません。ですがそれは「RPGを知っている」からそう思えるのです。

まず第一に隣に宝が2つあり取っていきます。その後に奥の宝を取るのですが実は重要な説明が入っています。

RPGの事を何も知らないと思ってください、その場合以下のように動いて宝を取りませんか?

何も考えていなければ道はあるし通れないとは思いません。ですが歩こうとすると進めないのです。ここでプレイヤーは足場と通れない道があることがわかります。そして横から通れる事で主人公と同じサイズの所なら通れる事を理解するのです。

そして手前の兵士から姫が攫われているという驚愕の事実を知り何故空いているのかがわかります。一国の王として姫の事より国王として打倒魔王を掲げている、兵士から聞くというのもリアリティがあります。「魔王を倒す」に中目標である「姫を救い出す」が追加されます。これで話が「勇者の子孫である主人公が、姫を救い出して魔王を倒す」になります。

左の兵士は隣の町についての話をしてくれて、右の兵士はかぎの使い方と扉を開けたら冒険が始まる事を教えてくれるのです。この「扉を開ける」までがチュートリアルになります。

鍵も1度使うとなくなるというのは今でこそ見ないですが、当時はキャッスルエクセレントやソロモンの鍵などで鍵は使うとなくなるというのが比較的一般的でした。

そして階段を進むと大きなフロアに出ます。

パッと見で通れる道、通れない道、そして話ができる人は全て腕を振ったり移動したりして動いています。兵士のように動くなら話かけられる事を自ずと理解できます。

周囲の人はプレイ方法や竜王にどれだけ酷い目にあわされた事を話してくれます。それに扉の中に宝がたくさんあるので欲しくなり鍵をどうやれば手に入るのだろう?と小目標ができます。

そして城から出ると……ドラクエⅠの有名なフィールドです。

川へ隔てて明らかに危険そうなお城が見えるではありませんか。最終目的地を暗に知らせていて、各地域を回って初めて到達できる所になります。

近くの町へ行くと入ってすぐ武器防具の店があり、そこで装備を購入する事ができます。

  

そして購入すると勇者の見た目に剣や盾が追加されます。これまで何も持っていなかった勇者に武器や盾を持つようになるので装備したことを理解します。

全部買いたくなりますのでお金を貯めて装備をしていく小目標がまたできました。

そうして広大なフィールドを歩いて魔王を倒すために鍛えて様々な場所へ行く大冒険となるのです。わかっていれば不要になる要素もたくさんありますが、何も知らない人にはこのように丁寧かつストレスないように誘導する事が重要になります。

もし冒険で死んだ時もゲームオーバーや最初からやり直しなどはなく、所持金の半分になるだけで王様の前に戻ってきます。これはトライ&エラーを繰り返しても所持金半減のリスクで済むのでストレスがほとんどない極めて優れた仕組みですね。

 

限られた容量を取捨選択

容量のなさは今でこそよくわからないと思いますがドラクエⅠは最大で64kbしかありません。

ドラゴンクエスト - Wikipedia

64kbがどれほど凄いかというと、パソコンでスクショ取って張り付けている上記の勇者の画像が9.38kbあります。この画像7枚でドラクエⅠは作られているという事です。

それがどれだけおかしい事かわかりますでしょうか、それなのにあの広大なフィールドを歩けるようにシステムが組まれているのです。一体どんな作り方をすればできるのか今のクリエイターではほぼできないでしょう。

その限られた容量を勇者の剣や盾もそうですが説明なく理解してもらう為に容量の大半を使っています。それは何も知らなくても理解できるようにすることに全力を出しているからでしょう。

それと実は勇者には4つの見た目があり、装備以外にもあります。それは報酬「ローラ姫を抱いている姿」です。

本当に細かい、これほど16×16を最大限利用しつつ報酬と思えるのはないでしょう。しかも城に帰るまで旅の間ずっと抱えているのです。(姫を抱えたまま宿に泊まると更に報酬も?)

容量の問題は他にもあります。カタカナの制限です。

本当に最小限どころか、実際に必要な「ダークドラゴン」の名前を「ダースドラゴン」に変えて出すほど2バイト(1文字分)を削る事で完成するような削減を行っています。

 

終わりに

本当はまだまだ語りたい所はありますが、記事が長くなりすぎるのでこの辺りまでにしておきます。

個人的に好きな所はドラクエⅠのキャッチコピーが「今、新しい伝説が生まれようとしている」に対して、ドラクエⅢのサブタイトルが「そして伝説へ……」となっているので伝説は最初に戻るというのを知るドラクエⅢのエンディングは今でも語り継がれているのは本当の名作でしょう。

ドラクエⅠは制限の中で最大の表現、そして突き詰められた情報を理解できるところまで絞り込む丁寧さ。これらの要素は何年、何十年経とうとも消える事はないでしょう。

もしゲームクリエイターを目指す人がいるならどんなジャンルでもキラーソフトというのはあります、自分の好きなジャンルはどんなキラーソフトで爆発的にヒットしたのか調べて自分なりに分析してみるととても面白い結果が待つかもしれません。